私はアニメ視聴の感想をブログには普段書きませんが、とても考えさせられる作品だったので書いてみました。
僕の妻は感情がない |
「僕の彼女は感情がない」は、少し進んだ未来。
ロボット技術が今の車並みに普及した世界の話です。
この作品のノリは軽いのですが、 扱ってるテーマはものすごく複雑です。
私はこの作品の1話だけ見て、ロボットに人並みに愛を注ぐ主人公に対して「不気味」な印象を受け、しばらく見ていませんでした。
「僕の妻は感情がない」は最近みた他のアニメ「俺は全てを【パリイ】する」 のように、 誰も傷つけず勧善懲悪で何も考えないでエンターテインメントとして観れる作品と違い、いろいろ考えさせられるため、体力、気力ともに揃ってる状況でないといけません。
俺は全てを【パリイ】する ~逆勘違いの世界最強は冒険者になりたい~ 1 |
※「パリィする」は最高に面白いです、ディスってるわけではありませんので、補足しておきます。
見た後の感想としては
「僕の妻は感情がない」は酷い描写も展開としては想像しましたが、わりと優しい世界の話だったので、そこまで構えなくても大丈夫でした。
調理家電
コミックス版 僕の妻は感情がない 01 |
主人公は購入したロボット、ミーナは調理家電だといいます。
食事を作ってくれるロボットという事で、カテゴリーとしては
シャープ ヘルシオ ホットクック 電気調理鍋 |
ホットクッカーあたりが私が生きている世界線の家電として一番近いかと思います。
このヘルシオホットクックは、音声アナウンスをフリーレンの声でしゃべってくれたりするらしく、これに生成AIで自由に応答できるようにした感じともいえます。
そして大きな違いが、人型であり、女の子の顔が付いています。
第1話から主人公はロボットミーナを人扱いして、若い男性が女性にするような愛情を示す行為をロボットに対してしようとします。
ホットクックに欲情してるような光景は、やはり「不気味」とか「気持ち悪い」という感情が発生しました。
気持ち悪いという感情
この主人公がロボットを愛しているという事に対して「気持ち悪い」という感情がわいたのですが、 なぜそう感じるのか考えます。
他人が好きなものを気持ち悪いと思う感情は、自分からは普段あまり発生しないです。
整理してみます。
家電を愛することには気持ち悪いとは感じません、その家電が女の子の形をしていて女性として愛そうとしていることに気持ち悪いと感じたのでしょうか?
ドラえもんで、ロボットであるドラちゃんとのび太の関係を気持ち悪いと感じたことはありません。
女性型ロボットに対する男性の欲情のようなものが気持ち悪いのでしょうか?
主人公の愛が理解できないため、自分の理解できない愛の形を気持ち悪いと感じたのでしょうか?
自分が理解していないものを愛してる人、把握はしていても自分が興味が無かったりするものを愛してる人を「気持ち悪い」という言葉で片付けたような気がします。
続けてこの作品を見ていくと、変化があります。
主人公の妹が登場し、話に関わってくるところです。
密室で男がロボットに愛を注いでる怪しげな風景から、妹を含めて日常的な風景が描かれるようになり、ドラえもんレベルまで普通の光景に変化します。
ロボットのミーナにも感情があるような行動が見られ、視聴側も「ただの家電ロボット」とは思わなくなります。
ペットロボット
また子供のようなロボット「マモル」 が追加され、さらに普通の光景になっていきます。
作中でマモルはバグにより2~3歳児程度の知能のロボットとして小さな子供のようなふるまいをします。
主人公の両親がその「マモル」が可愛くて、同型機を買ったら全然違ってがっかりする描写があります。
ホットクックはミーナにはなれていませんが、ペットに相当するロボットは今でもあります。
LOVOTや
NICOBOなどです。
https://ec-plus.panasonic.jp/store/page/NICOBO/
昔はAiboもありました。
本当にかわいがれるのか?という疑問はあるものの、これら愛玩ロボットに気持ち悪いという感情を抱く隙はありません。
自分をはじめ、人はかわいいもの、幼いものには寛容です。
やはりミーナが女性型というところにありそうです。
人間の女性の代用品にしているから気持ち悪いという感覚なのでしょうか?
不気味の谷
不気味の谷は
「人間は、ロボットの外見や動きが人間に近くなるほどロボットへの親 愛度が高まるが、類似度があるレベルになると逆に不気味に感じる。 しかし、類似度がさらに高まると親愛度は最大になる」
というものです。
ロボットミーナの上位機種が、話が進むと登場します。
スーパーミーナと呼ばれるロボットで、主人公の買ったミーナとは違い、家族として愛される前提で作られていて限りなく人に近いという違いがあります。
ロボっぽくない後ろの子がスーパーミーナ |
スーパーミーナは動くとアクチュエータの音はすれども、アニメ作品である事も手伝って見た目は人と変わりません。
また性格も上位機種の割にはポンコツで、たいへん人間らしくなっています。
また所有者が性とは切り離せる少年であることも関係し、スーパーミーナと所有者の関係を気持ち悪いとは感じません。
ミーナは廉価版という事で、いわゆる金属ロボットの体に女の子の顔が付いていて、口を動かさずに事務的な喋りをする。
ちょうと不気味の谷を狙ったような外見で、1話がちょうど不気味の谷がマックスで話が進むほど、人間のような感情や行動により親愛度が上がり不気味の谷を越えてきます。
不思議な感覚です。
ロボットに顔をつける意味
現在でもファミリーレストランのガストへ行くと、ロボットが配膳してくれます。
猫の顔が付いたBellaBotというロボットです。
ネコ型配膳ロボット BellaBot |
本質的には動く配膳台でしかないのですが、猫の顔と「~にゃ」という猫を擬人化したようなしゃべりで、子供は喜ぶし、大人もなんだか楽しいと感じます。
調理ロボットであれば、人のような顔はなくてもいいのですが、ミーナにはかわいい女の子の顔が付いています。
Bellabotが猫の顔と猫キャラっぽいしゃべりをすることで、人が勝手に猫のようなロボットと思い込む効果があり、ミーナも人が勝手に女の子だと思い込むのです。
ミーナもそれを受け入れるというのか、自分の主人が望む方向に合わせているだと思いますが、ChatGPTなどにキャラクター設定して演じてもらうと違って、人のような基本の性格があるような描写がみられます。
ラスト
ミーナは単なる中古屋ではなく、ミーナシリーズの試作機として作られた過去が明らかになります。
特別なロボット(個性がある)という裏付けがついて、ミーナを愛する主人公に対して気持ち悪いという感情は無くなります。
人間のように感情があり、特別である。
ミーナはロボットだが、ほぼ人間に等しいと感じる(人が勝手に思い込む?)ことで不気味の谷を越え「気持ち悪い」という感情がなくなったのです。
主人公のミーナへの気持ちも「本気」であることも関係します。
自分をはじめ、人はそこに存在するものが特別であると思い込むことで愛せるのかと感じました。
その点、人でも犬猫でも生物はなにもしなくても「特別」で、愛するにはこの特別感がなければならないのかと思います。
気持ち悪いの正体
自分が特別だと思わないものを愛する事が気持ち悪いと感じたようです。
主人公にとっては特別なので、視聴者と主人公の間にギャップがある1話が著者の方の狙いがあるように感じます。
その後を考える
家電製品としてのミーナは修理期間があり、修理期間が終わったあとに開発したエンジニアでもない主人公が維持していけるのか気になってしまう。
また、メンテナンスが行き届いてミーナが半永久的に稼働できたとしても、主人公が寿命を迎えるとき、残されたロボットはどうなるのか?
自分を愛してくれるロボットに看取られるというのは、それはそれで幸せな気がする。しかしロボットを妻とした主人を失ったロボットを、引き取る人間もいないわけで、妹の子供とかに引き取られる、または不要で処分されるという事になるのだろうか。
昔の王様みたいに、主人と共に埋葬?
こんな風に書くと、ロボットの気持ちはどうなの?という風に感じるが、
現世界も作中にもロボットに人権はないので、おそらく廃棄または初期化して別の人が使うなんだろう。
話自体は、 たのしいのだけれども、いろいろと考えさせられる作品です。
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僕の妻は感情がない 05 |
コミックでアニメの続きを読んでみました、アニメは4巻の途中までなので、4巻の後半あたりからです。
所有者が死亡してしまったロボットの話もでます。
この世界ではロボット連れて外出も割と普通の行動のようで、自分の世界線と、このコミックの中の世界はかなり近いが、微妙に価値観が異なっている事も読むとわかります。
コミックの中はわりと優しい世界です。