
この記事の対象
この記事は、ATXマザーボードでPCI-Expressスロットが空いているPCに、RTX3060 12GBを追加して、ローカルLLM用の複数GPU環境を作りたい人向けです。
想定用途は、7B ~ 12B級のローカルLLMを常時動かすことです。
メインGPUとは別に、LLM用GPUを追加する構成を考えます。
LLMのセットアップはこの記事では扱っていません。
※この記事は、主にBTO PCや自作PCを想定しています。
メーカー製PCの場合、パーツを追加したりすると、保証対象外になることがあります。また、電源やマザーボード、ケース形状が独自仕様の場合もあり、GPUを追加できないことがあります。メーカー製PCで試す場合は、事前に保証条件とPC内部の構成を確認してください。
複数GPUで何がうれしいか
GPUを2枚にしても、単純に2倍速くなるわけではありません。
複数GPUでうれしい点は以下です。
- 1枚をLLM常駐用にできる
- メインGPUを画面表示やほかの処理用に残せる
- VRAM不足を避けやすい
- 複数の処理を分けやすい
- 2枚使って、大きいモデルの検証もできる
ローカルLLMを常時使うなら、LLM用GPUを分けられるのは便利です。
まずPCの横フタを開ける
最初に確認するのは、PCの中身です。確認するものは以下です。
- マザーボードの型番
- マザーボードのサイズ
- 空いているPCIe(PCI-Express)スロット
- ケース内の空きスペース
- 電源容量
- PCIe補助電源ケーブルの余り
GPUが物理的に刺さらないなら、その時点で追加は難しいです。
マザーボードの型番
| 場所はさまざまです |
マザーボードの型番は、マザーボード本体に書かれています。
ただし、GPUやCPUクーラーなどのパーツで隠れていて、読み取りにくい場合があります。
型番が分かれば、メーカーサイトや画像検索でマザーボードの構成を確認できます。
複数GPUを考えるなら、基本的にはATXが向いています。
microATXでも可能な場合はありますが、PCIeスロットやケース内のスペースが足りないことがあります。
mini-ITXは基本的にGPU追加には向きません。
PCIeスロットを確認する
次に、PCIeスロットを確認します。
見る場所は以下です。
- 長いPCIe x16スロットが空いているか
- 短いPCIe x1スロットしかないか
- 他にPCIeを使うカードがあるか
理想は、空いている長いPCIeスロットにRTX3060をそのまま刺せることです。
短いPCIe x1スロットしかない場合でも、ライザーカードを使えばGPUを接続できることがありますが、ここでは扱いません。
排他について
特に確認したいのは、PCIeスロットの排他仕様です。
排他仕様とは、あるスロットを使うと、別のスロットの速度が下がったり、使えなくなったりする仕様のことです。
メーカーサイトにはマニュアルが公開されていることが多く、PCIeスロットの仕様も確認できます。
※マニュアルは、メーカーサイトの「サポート」タブに置かれていることが多いです。
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| 出典:ASUS社「TUF GAMING B550-PLUSマザーボード ユーザーマニュアル」p.XI |
このマザーボードでは、2つ目のPCIe x16スロットを他の短いPCIe x1スロットと同時に使うと、速度がx4からx1に低下することがマニュアルに書かれています。
ただし、GPU以外の拡張カードを併用しないなら、この制限はあまり問題になりません。
このマザーボードでは、2つ目のPCIe x16スロットを単体で使えば、PCIe 3.0 x4の速度で動作することが分かります。
GPUの厚みを確認
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| まずはメーカーのスペックから調べよう |
既存GPUが3スロット以上ある場合、2枚目のGPU追加は難易度が高くなります。
GPUの厚さは「2スロット」「2.5スロット」「2.7スロット」のように書かれていることもあれば、ミリ単位で記載されていることもあります。
スロットとは、基板上にあるPCIeの差込口の事で、1スロット約20mmです。
製品ページの仕様(スペック)欄まで見ないと分からない場合もあります。
分からない場合は、GPUの型番で検索するか、実際に定規で測っても構いません。
また、ChatGPTなどにGPUの型番を伝えて、仕様が書かれているページを探してもらうのもよいでしょう。
スロット数と厚さの目安は、次のようになります。
| スロット数 | おおよその厚み | 備考 |
|---|---|---|
| 1スロット | ~20mm程度 | 薄型(省スペース向け) |
| 2スロット | ~40mm前後 | 標準的 |
| 2.5スロット | ~50mm程度 | 多くのRTX 30/40シリーズがこのサイズ |
| 3スロット以上 | 51mm~60mm以上 | ハイエンドモデルに多い |
続いて、追加で購入するGPUの厚さも確認します。
既存GPUと追加GPUの両方が3スロット未満であれば、ATXケースでは複数GPU構成がかなり現実的になります。
GPUの長さを確認
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| 最終手段は自分で計る |
GPUの厚みだけでなく、長さも確認が必要です。
GPUが長いと、ケース前面のファン、HDDケージ、ラジエーターなどにぶつかることがあります。
確認するものは以下です。
- GPU本体の長さ
- ケースの対応GPU長
- フロントファンとの干渉
- 補助電源ケーブルを挿す余裕
RTX3060でも、短い2ファンモデルと長い3ファンモデルがあります。
2ファンモデルなら比較的入れやすいですが、3ファンモデルは長くなりやすいです。
特にBTO PCや小さめのケースでは、GPUの長さが原因で入らないことがあります。
ケースの仕様に「対応グラフィックボード長」「最大GPU長」のような項目があるので、型番で調べて確認しましょう。
迷う場合は、実際にケース内を定規やメジャーで測るのが確実です。
ここまで確認して、GPUの厚み、長さ、PCIeスロット位置に問題がなければ、物理的に2枚目のGPUを追加できる可能性が高いです。
ただし、実際にケースへ収めると、ファンの吸気スペースや補助電源ケーブルの取り回しが問題になることがあります。
刺さるだけでなく、冷却と配線の余裕も確認しましょう。
電源を確認する
次に電源を確認します。
確認するものは以下です。
- PCIe補助電源ケーブルの余り
- 電源容量
- CPU用8pinと間違えていないか
ケースに取り付けられた状態だと型番や仕様が読めないかもしれません。
PCIe補助電源ケーブル
| 6+2で8pinケーブルです |
RTX3060は、基本的に8pin PCIe補助電源を使うモデルが多いです。
PCIeと書かれた電源ケーブルに余りがない場合は、今の構成では追加できないということです。電源交換が必要になります。
PCIe補助電源ケーブルは少し昔のGPUが6pinだったこともあり、6+2ピンという分離できる形状になっている事もあります。
古い電源だと、+2pinが無く、6pinしかない場合もありますが、そのような電源でGPU2枚稼働するのは現実的ではないので、割愛します。
一方で新しい電源では12VHPWRや12V-2x6というPCIe補助電源ケーブルが使われています。
RTX 40シリーズ以降のGPUでは、この形式の補助電源を使うモデルがあります。
すでに新しいGPUを使っている場合、12VHPWRケーブルは現在使用中のGPUに接続されている可能性があります。
そのためもしもRTX3060より新しいGPUを追加する場合は8pin PCIe補助電源だけでなく、12VHPWRケーブルの余りも確認が必要です。
ただし、12VHPWRケーブルが余っているとは限りません。
電源によっては、8pin PCIe補助電源から変換アダプタを使う構成になることもあります。
| 変換アダプタ例 x3 x4などもあります。 |
SATA電源からPCIe補助電源へ変換するケーブルも販売されていますが、供給できる電力が足りず危険です。GPU用の補助電源として使うのは避けた方がよいです。
CPU用8pinと間違えないように
8pinのPCIe補助電源ケーブルとよく似た形状でCPU補助電源ケーブルがあります。 ふつうはCPUと書かれており、見分けられます。
このケーブルはPCIe用には使えません。
電源容量
電源容量は、CPUや既存GPUの消費電力も含めて考える必要があります。CPU、マザーボード、メモリ、SSD、ファンなどで、ざっくり200W程度を見ておくと安全です。
例えば、既存GPUがミドルクラスで約250W、追加するRTX3060が約170W、CPUやマザーボード周辺で約200Wと考えると、合計は約620Wになります。
この場合は、750W以上の電源を見ておくと安心です。
RTX3060を2枚使う構成なら、GPUが約170W × 2枚で約340W、CPUやマザーボード周辺を約200Wとして、合計は約540Wになります。
この場合は、最低でも650W、できれば750W程度の電源を見ておくと安心です。
また、GPUの補助電源は主に+12Vを使います。
電源によっては、+12VがV1、V2のように複数の系統に分かれていることがあります。
この場合、単純に+12Vの数値を足せばよいわけではありません。
どのケーブルがどの+12V系統につながっているかを確認し、それぞれの上限を超えないようにする必要があります。
そのため、+12Vが複数系統に分かれている電源では、少し難易度が上がります。
不安な場合は、電源のカタログや仕様表で、+12Vの出力とPCIe補助電源ケーブルの数を確認しましょう。
実際には構成によって変わりますが、電源容量を考えるときは少し余裕を持って見積もった方がよいです。
RTX3060の選び方
新品が供給されているようですが、新品で買う価値はあまりないです。
中古を3万ちょっとで入手するのが理想です。
この記事の公開タイミングではソフマップが29,980円で販売していました。
【秋葉原特価品情報】GeForce RTX 3060の中古バルク版が3万円割れ🉐ソフマップAKIBA パソコン・デジタル館https://t.co/LKdbWVTszR pic.twitter.com/nZf1O8WYxE
— エルミタージュ秋葉原編集部 (@hermita_akiba) June 27, 2026
中古だと選択肢が少なく選べないかもしれませんが、個人的なオススメは、ファンが停止するタイプです。
LLMの場合、推論時に負荷はかかりますが、一時的なものです。
比較的負荷が高いHermesAgentでの利用でも、依頼をしたときだけファンが回るため普段は音がありません。
わたしが買ったモデルでは、ASUS ROG Strix RTX3060は3060にしては不釣り合いなほどヒートシンクとファンが大きいです。
ただ、その分、冷やせてしまうのか、なかなかファンが回りません。
追加で買ったELSAのRTX3060 S.O.Cもファンが停止するモデルですが、ヒートシンクが小さいため、RogStrixよりはファンが頻繁に回ります。
何もしていないときはどちらのGPUも無音です。
世代が違いすぎるGPUは避ける
複数GPU構成では、GPUの世代が離れすぎている組み合わせは避けた方がよいです。
特にRTX 50シリーズは、RTX 40シリーズまでと比べて設計が新しいためか、古いドライバが使えない場合が多く、共存が難しくなります。
私の環境では、RTX5070とRTX3060は共存できました。
一方で、RTX5070とGTX1060は、WindowsでもLinuxでも共存できませんでした。
RTX 20シリーズ、RTX40シリーズは所持していないため、検証できていません。
RTX3060とGTX1060は共存できる可能性がありますが、こちらも試していません。
複数GPUで使うなら、できれば同世代、または近い世代のGPUを2枚使う方が無難だと思います。
まとめ
RTX3060 12GBは、ローカルLLM用の追加GPUとして扱いやすいです。
ただし、重要なのはGPU性能より先に、以下を確認することです。
- 物理的に刺せるか
- ケースに入るか
- 電源が足りるか
- 補助電源ケーブルがあるか
- 冷却できるか
ATXマザーボードでPCIeスロットが空いている人なら、複数GPU環境はかなり現実的です。
一方で、microATXやmini-ITX、狭いケース、余裕のない電源を使っている場合は、GPU以外の交換費用も考える必要があります。
交換パーツが多いと、もう1つPCができてしまうような笑えない状況もありえます。
複数GPU環境は、PCの空きスロットを活かしてローカルLLMを常用するための現実的な選択肢です。
そのまま追加しやすい構成
以下の条件を満たしていれば、RTX3060を追加しやすいです。
- ATXマザーボード
- 長いPCIeスロットが空いている
- ケースに空きがある
- 電源容量に余裕がある
- 8pin PCIe補助電源が余っている
この場合は、RTX3060を追加するだけで複数GPU環境にしやすいです。
そのまま追加しにくい構成
以下の場合は、GPU追加の難易度が上がります。
- microATXでスロットが足りない
- mini-ITXを使っている
- ケースが狭い
- 電源容量が足りない
- PCIe補助電源ケーブルが足りない
- GPU同士の間隔が狭い
- 1枚目のGPUの厚さが3スロット以上
この場合は、GPU以外のパーツ交換も必要になることがあります。
必要になる可能性があるものは以下です。
- マザーボード交換
- PCケース交換
- 電源交換
- ライザーケーブル
- GPU固定方法の見直し
GPU本体だけの費用で済まないことがあります。
おまけ
ここから先はマニア向け
ここから先は、ケースに収まらない場合や、PCIe x1スロットを活用したい場合の話です。普通にRTX3060を追加できる人は、ここまで読めば十分です。
PCIe x1スロットとライザー
PCIe x1スロットにライザーを使ってGPUを接続する方法もあります。外付けGPUBOXのオシャレじゃないやつと考えるとわかりやすいです。
ローカルLLMでは、モデルがVRAMに載っていれば、PCIe帯域の影響は小さいことがあります。
ただし、以下の場面では遅くなることがあります。
- モデル読み込み
- GPU間通信
- VRAMからあふれる処理
- 複数GPUにまたがる処理
x1ライザーは、動けば便利です。
ライザー用にPCIe補助電源ケーブルがさらに必要になることもあり、たいへんです。
さらに、安定性と固定方法に注意が必要です。
裸PCという選択
ケースに入らない場合、マザーボードをケース外に出して使う方法もあります。
いわゆる裸PCです。
裸PCにすると、ケースの制約がなくなります。
広い部屋ならエアフローも関係ない。
ただし、以下の問題があります。
- スイッチ類がない
- ホコリ
- 音
- 接触
- 固定
- 見た目
- 置き場所




